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はらぺこすけるとん

スケルトンは家族を愛している。傍目に見ていると、(それが家族の目でも)そうは見えないかもしれないが彼女の性質、その他もろもろの要因上それは仕方のないことである。少し斜視がかったタレ目や、いつも少し開いている口元もその要因だ。
それでも(まあ、外見で人を判断するなという言葉もあるし)とにかく彼女は家族愛で満ちている。

優しい姉のワイト(巨乳)、父親代わり(最近では母親代わり)のリッチ(無職独身童貞)。
その二人への愛で満ちている。
今日もスケルトンは幸せであった。

【話にとくに関係のない前置き】終わり。


【休日のスケルトン】



朝、スケルトンは意外にも一番早く目を開く。
いつの間にやら脱ぎ捨てていたパンツを履き、酷い寝癖を直す。
傷んだ髪は櫛を中々通さないのでいつも苦戦する。
そして珈琲臭がするチコリティーを腹に入れる。普段から貧血気味の彼女には手放せないものだ。
チコリティーの香りでリッチが起きてくると、彼女は姿を見られないように霊体化してまた布団に戻る。
大した意味は無い、小学生が白線の上を歩くようなものだ。
冷蔵庫からかっぱらってきたジンジャークッキー(リッチお手製)を布団の中でかじり、盛大にシーツに粉を落とす。お腹が膨れたら二度寝、ワイトはまだ夢の中だ。次にワイトに起こされるときにはクッキー屑まみれの寝癖に苦戦するだろう。

昼、スケルトンはワイトに叩き起こされる。
休日故かワイトもぐっすりだったようだ。外面を整え着衣をワイトに(自主的に)手伝わせ目を擦りながらキッチンへ降りるとリッチの両腕が絆創膏だらけだった。
恐らくワイトを起こしにいって寝惚けた彼女にやられたのだろう。
普段はこんなこと無いのだが土日だけの特別風景で、ワイトはスケルトンの背後でばつの悪そうな顔をしていた。
今日の昼飯はリッチお母さんお手製の金魚カルボナーラだった。金魚カルボナーラはお子さまの食うものだとか某警官に言われるけれど知ったこっちゃない。(お前も童顔の癖に)
旨いものは旨い。そしてスケルトンはまだ子供なのだ。
麺のゆで具合といいカリッとした鱗といい少し濃いめの味付けといい寝起きの空腹には最高だった。
リッチが夜飯に繰り越すかもな、と思うほどに作りすぎていたのだがそれは杞憂だった。
なんつーか、成長期万歳。

今日はリッチの働くパイプツリーシアターで楽しみにしていた映画が上演されるのでリッチにその旨を告げ、愛する姉と家を出た。因みに今住んでいる家はメンヘラネコに前の家を占拠されたので適当に住み着いたものである。
街は休日なので少し人とカラベラが多い。いつも通り太陽は無いが世界はぼんやり光る晴天で、メンヘラネコのニップが35人目の主人を追いかけ回していた。

ワイトが道程を半分ほど来て初めて忘れ物に気がついた。まさかのチケットを忘れたらしい。
いやだわ、入場できないしカラントワッフルも食べられないじゃないの!!取りに行ってくるわ!!先行ってて!!!
映画を楽しみにしているのはどうやらスケルトンだけであったようである。ワイトはコンクリートにヒビを入れる勢いで走っていった。
特に寄りたい店もなし、時間もあるしどうしようか、とゆらゆらと歩いていくと、メイドナースのホーントさんがカラベラ三匹に絡まれていた。ナンパだろう。二次被害を被りたくないのでそっと裏道に...後ろから高い怒声と骨が折れる音が聴こえるが気のせいだ。きっとカルシウムが足りてないのだろう。そういえば最近イワシキャンディーが値上がりしていた筈だ。うん。

イワシキャンディーの値上がりとワサビシュガーの消費量について考えているとお腹が減ってきたのでポケットを漁ってみた。
ポケットにはお気に入りでもない財布しか入っていなかった。残念である。少し顔に陰を落とす。
すると、物理的な影が落ちてきた。此方をニヤニヤと見てくるぶっさいくな顔。
所々で見える地毛の色は黒だが染めているのだろう。犬が二足歩行で煙草を吸いながら寄ってきた。
受動喫煙には敏感な姉である、もしも自分が煙草臭かったらすぐさま熱湯に沈められてしまう。犬に向かって近くにあったバケツをひっくり返した。
にゃにすんだこにょあま!!!
どうやら猫とハーフだったようで、猫語が混じっていた。

犬(猫)が追いかけてくる。
追われたときには霊体化しろという姉の教えであるし実行はしてみたもののよく考えたらあいつらは鼻がべらぼうにいいので無駄だった。
裏道を逃げ続けているものの、表通りばかりを利用している上そもそも外出をほぼしないスケルトン、地の利は向こうにあった。ていうか体力も限界である。犬は息ひとつ乱れず追いかけてくるがスケルトンは荒い息を殺せていない。

10分も逃げると行き止まりである。
ゲヘゲヘと下卑た顔をして涎を垂れ流しながら犬(猫)は近付いてくる。ゆっくりと。
このままイヤァーンなイングリモングリをされてしまうのだろうか。それとも財布を奪われるのか、リンチされるのか。なんかもうどうでも良くなってきた。餃子食べたい。鮪の目玉が刻んで入ったコリコリとした餃子、勿論皮までリッチおかんの手作りである。
犬(猫)に手を掴まれる。お寿司でもいいや。鰤、鮭。スケルトンは魚介類に目がないのである。ワカメでもいい。手をべろべろと舐められる。海草だって海の食べ物だ。海産物だ。ひじきも犬がスケルトンの衣服に手を伸ばすいいなあ。ひじきと牛の子宮を混ぜたシチュー、あれはお袋(リッチさん)の味。ほのかに磯の香り犬がブッ飛ばされたがしたのだ。

スケルトンのお腹がなると同時に犬が後ろに倒れていった。
まるで映画のようだとスケルトンは思った。

犬は道におねんねしている。
ブッ飛ばしたのであろう人間は犬の体をまさぐっていた。もしかしたら変な趣味があるのだろうかと思ったがどうやら財布を漁っているみたいだ。とんだ糞野郎である。

おい、助けてもらっといてお礼も言えねぇのかチビ。

どこかで聴いた声、見た顔だ。
人の顔を覚えられないタイプの人間であるスケルトンであるが、流石に何十日もみてたら覚えられる。
糞野郎はルッコラだった。

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