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書きかけの緑高


私のために生きて

シーツの海に沈む高尾和成を、緑間真太郎の長い睫毛に彩られた瞳が見つめていた。
高尾の顔の大部分には包帯が巻かれており、彼の右足は太股の辺りまでしかなかった。
彼は深く眠っている。猛禽類のような眼を片方なくした瞬間から、足をなくすときもなくしてからもずっと、眠っている。
きっと眠ったまま命をなくしてしまうのだろう。緑間はそれを恐れていたが同時にそうあってほしいと願わずにいられなかった。何故なら、高尾はもうバスケが出来ないのだから。それは、緑間のせいなのだから。



高校時代、高尾は緑間の3pを何よりも愛していた。
そして、その奇跡のような3pを撃ち出す緑間のことを尊敬していたし、崇拝するように愛していた。

「真ちゃん、本当に指を大事にしてね」

手の甲にキスをしながら、高尾はよくそう言った。
今考えると彼は緑間本人よりも3pを愛していたのかもしれない、が、それは今や確かめることはできない。口にできない。バスケを失った彼に、そんなひどいことは。

高尾は高校を卒業して違う大学に進学してからもよく会いに来た。
「へへ、来ちゃった」なんていって二日とあけずに来るものだから、帰りが遅い自分を待って体を冷やしているものだから、一年もたった頃には緑間は自主的に部屋の鍵を差し出していた。
差し出された小さな鍵に彼は少し驚いたようだったけど、すぐに嬉しそうに、大事に仕舞っていた。

その鍵は一度も使われることはなかった。

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