お日さまの心 毛布を半分にして枕がわりにと頭をのせるとパキと何かが割れる音がしますので、おかしく思って毛布を開くとそこには二つに割れた心がありました。はて、誰の心だろ。もしや私の心だろうか、とヒヤリとしたものの、良く見ると私のではありません。はてと匂いをかぐとお日さまのにおいがします。ああ、こりゃ洗濯物を干していたときに、お日さまの心がくっついていたのかもしれないですね。窓から空をみれば、半円の形のお月さまが浮かんでおりますものね。これによって子供は、お月さまに見張られて夜更かしができなくなったのです。 [0回]
浴槽の夜 天井から落ちる紐を引っ張るとお部屋が明るくなるのですが、お風呂の浴槽だけはずっと真っ黒なままです。それは、窓辺から入った夜が鯉のようにゆらゆら泳いでいるからなのです。いうなら不法侵入ですのでお巡りさんを呼んでもよいのですが、夜があまりに楽しそうなので毒気を抜かれて、そのまま泳がせることにしました。そんなに楽しいのか、あなたは毎日大きな海に泳いでいるだろうに。と夜に問いますと、夜は何をいっているんだという顔をして、海は魚の、海草の、様々なものたちの住んでいる家なのだ。人様の家に勝手に映り混んで、君は楽しめるのかい。と物知り顔で言いました。かちんときて、ここは僕の家じゃないですか、といえば、夜は恥ずかしそうに逃げ出して、そっそっと昇っていってしまいました。ようやくお風呂に、朝が来るようです。 [0回]